リリックビデオを解剖する(前)Text by えむ
「リリックビデオ」という語のうちに含まれる多種多様なありようを詳しく分析して腑分けし、
①実写映像の中に歌詞の文字を造形したオブジェ等が含まれる〈実写/単一レイヤー〉、
②実写映像と歌詞テロップなどを合成した〈テロップ/二重レイヤー〉、
③歌詞も含めてすべての映像がアニメーションもしくはCGで制作されている〈アニメーション/多重レイヤー〉に
3分類した上で、それぞれの「前史」にあたる映像表現を考察しています。
歌詞自体を「見る」ためのものとして表示させる作品を「映像先行型」、
歌詞を「読む」ための記号として表示させる作品を「楽曲先行型」と呼び分ける
例えば最初のMVにして最初のリリックビデオともいわれるボブ・ディランの『Subterranean Homesick Blues』は、ディランのドキュメンタリー『ドント・ルック・バック』のオープニング映像として1967年に公開されたものだ。また同作と共にリリックビデオのルーツとして語られるプリンスの『Sign O' The Times』は1987年の作である。
トロント大学でポピュラー・ミュージックやMVの研究を行うローラ・マクラーレンは、ケイティ・ペリーのリリックビデオの分析を通じて、個人制作や二次創作の動画がプロのアーティストのMVにも影響を与えていることを指摘している
(Laura McLaren, THE LYRIC VIDEO AS GENRE: Definition, History, and Katy Perry 's Contribution, uOttawa Theses, September 17, 2018.)
日本ではボカロPVとか
歌詞の表示方法は様々だが、いずれも映像と音楽の同期がもたらす「共感覚」的な心地よさが作品の魅力を支えている(佐久間義貴「同期/非同期」『エクリヲ vol.11』p.40)
最初期のトーキー映画として知られる『ジャズ・シンガー』は1927年に公開され、「お楽しみはこれからだ」と語り、歌う唇と音声の同期(リップシンク)が大いに話題を集めた。豪華絢爛なミュージカル映画は1930年代のハリウッド黄金期を支えた。
サカナクション / アルクアラウンド
テイラー・スイフト『the 1』
エド・シーラン『Shape Of You』(2017)
MVとリリックビデオが別である
長回し/複数カット
長回しの映像 ロングテイク
吉澤嘉代子「手品」リリックビデオ
アルフレッド・ヒッチコック『ロープ』(1962年)
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)
ケイティ・ペリー『Birthday』
複数カット
Lyric Video Perfume 「Hold Your Hand」
カメラ
固定 fix フィックス
水曜日のカンパネラ『ブルータス』
ボブ・ディラン『Subterranean Homesick Blues』
酸欠少女 さユり 『ふうせん』鬼めくりリリックMV
移動
SING LIKE TALKING - 「風が吹いた日」リリックビデオ
再生速度
時間操作
酸欠少女 さユり 『ふうせん』鬼めくりリリックMV
やっぱボブ・ディランとにてるよね
水曜日のカンパネラ『マチルダ』
実時間
Little Glee Monster 『好きだ。』-Short Ver.-
SING LIKE TALKING - 「風が吹いた日」リリックビデオ
歌詞の支持体
立体
サカナクション / アルクアラウンド
amazarashi『季節は次々死んでいく』
立体の場合はあんまり読ませる気はなさそう
平面
アヴィーチー『The Days』
テイラー・スウィフト『Lover』
混在
ケイティ・ペリー『Birthday』
楽曲先行型と映像先行型
ミュージックビデオの身体論 えむ リリックビデオを解剖する
https://note.com/sasakiyusuke/n/ncf1b04224ea5?magazine_key=m8d95f6c32fc7